ナーシングホーム平岸

人生で大切にしているもの

みなさまこんにちは。ナーシングホームしあわせ平岸・看護師の新井田です。

当施設は「認知症対応型」ナーシングホーム、となっております。

つまり、認知症+疾患を持つ方々が入居されています。認知症を持つ方に合わせてグループホームの形態を取っておりますので1ユニット=9名の入居者様が生活しておられます。

認知症、と言うと皆様はどのような状態をご想像されるでしょうか。物忘れ?徘徊?

そうですね、そのようなことも起こり得ます。

認知症とは、脳の病変や萎縮によって理解力や判断力の低下・記憶障害が起こり、それによって生活に支障が出る状態のことです。この、理解力や判断力の低下・記憶障害は認知症の中核症状と言って、認知症が発症した場合、進行の程度に個人差はありますが残念ながら改善することはありません。一方で、徘徊や興奮(感情の起伏が激しくなる)などは周辺症状と呼び、中核症状×環境×ご本人の性格によって二次的に引き起こされるものを指します。ですので、周辺症状については環境を整えたり、声掛けの仕方を工夫することでご本人の不安を軽くすることが出来るとされています。

当施設のご利用者様でM様という方がおられます。

勤務して日々観察していると、夕方や朝に落ち着きが無くなります。パーキンソン病と骨粗しょう症があり、パーキンソン病=体の動きが低下し転倒しやすくなる・骨粗しょう症=骨がもろくなり少しの刺激で骨折に至る、という状況です。M様も例外ではなく、当施設にいらっしゃる前も複数回の転倒した履歴があり、転倒による骨折もご経験されていました。そのため、M様が動かれる際は必ず職員が付き添い、お1人にはならないように配慮しています。ご説明をしても一人で立ち上がろうとされるため、危なく目が離せません。これは認知症の中核症状=記憶障害によるものなので、解決は難しいです。そこで動こうとする理由をお尋ねします。ご本人によると、夜は「家に帰らなきゃ」と思うとじっとしていられず、また朝は「漁があるから仕事に出なきゃならない」と焦るそうです。どのような時も、ご本人の中にあるお気持ちはそのまま受け入れて否定はしません。「家に帰る」と仰るときは、『そうですね、でも今から帰ると深夜になってしまうのでよろしければ泊っていきませんか?ごはんもありますよ』と言うと、「うーん」と考えて下さり、『あまり遅いご帰宅ですとご家族が寝ないで待ってしまうかも…』と言うと、「…そうね、明日にするわ。」と納得してくださいます。(最近は言い訳を考えるのが上手になった気がします笑)。ご高齢の方は優しくご家族思いの方が多いので、ご自分のことよりも私たちスタッフやご家族に心配をかけまいとふるまわれます。(話が逸れますが、このような場面でとても癒され、優しい気持ちを沢山頂きます。)早朝も「漁が始まる」とお1人で動こうとされるので『今日は日曜日なので漁はお休みです』(ちなみに強風で漁がお休みのパターンもあります笑)とお伝えするとホッとした表情をされ、再び休まれます。

このように少しの工夫でM様の不安な気持ちや焦りを軽くできるのも看護・介護の醍醐味だと思っています。余談ですが、私は個人的にご利用者様の、「どうしたいの?」「何がしたいの?」を掘り下げるのが大好きです。この質問を投げかけると、ご利用者様の希望を通じて「人生で大切にしているもの」に触れられるからです。「人生で大切にしているもの」がわかると、その方の価値判断に寄り添うことができ、一緒に考え、悩むことが出来ます。問題の解決ができなくても、少なくとも一緒の目線で共にあろうとすることが叶います。

看護学生の時には「看護って何だろう」と思っていましたが、働いている今はそのようなことは考えなくなりました。恩師の言葉を借りると、「看護とは、”よく生きる”を助けること」です。とても抽象的な言葉で当時は分からなかったのですが、当施設の入居者様のような、ご高齢の方や病と共に生きなければならない方の側に居させて頂くことで少しずつ分かってきた気がします。「生きる」というと大げさに聞こえますが、毎日みなさまが行っているような、朝起きて、食事を作って食べて、電車に乗って仕事へ行く…このようなことです。生きる=生活ですが、この動作一つ一つに援助を必要とする方がナーシングホームには入居されています。動作一つ一つの援助にもご本人の「どうしたいの?」「何がしたいの?」を活かして行くのが私たちの責務だと思っています。では、本日も笑顔でがんばります!

お読みくださりありがとうございました。

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