ナーシングホーム西野

トマトの贈り物

しあわせ西野看護師島田です。
 
 「昔はね、トマトに砂糖をかけて食べたんだよ。甘い果物の代わりになってね。とっても美味しいかったよ。食べるものが何にもない時代だったから。トマトはそのまま晩ご飯のおかずにもなってね。」

 利用者様の87歳のお誕生日に真っ赤な「トマト」と豪華な「お花」が娘さんから届けられた。
トマトは食べやすいようにと、皮をむいて小さく刻み、そのまま砂糖水に漬けた瑞々しいデザートのようだった。ちょっと口をすぼめてスプーンで少しずつトマトを食べ始めた瞬間、嬉しそうに目が輝いた。ひんやりとして甘く美味しかったようである。

 これは旨い、懐かしいものだという感覚が蘇り、小さな感動とともに胸の中があたたかな気持ちになられたことだろう。宝石・ルビーのように真っ赤なトマトはなんともいえず美しく輝き、そして母娘の心と心をつなぐ思い出がいっぱい詰まったものだった。
 利用者様の優しい目と穏やかな表情がそう答えているように感じられた。

 母から娘さんが受け継いだものは、逞しく、素早く、そして頼もしさと心温かさである。
娘さんは、離れて暮らす母への熱い思慕の念を抱きながら、生き生きとしてごく自然に上手に生活されているように思われる。母に逢いたさ一心で多忙な日々を過ごされていることは想像に難くない。

 愛しき母へ、言葉ではない何かを伝えようとしているものだということが胸に響く。

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